ソニーらがClaude提訴。海賊版学習と「1曲24百万円」請求が示す一線

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ソニー・ミュージック・パブリッシングやワーナー・チャペルなど音楽出版社35社が、生成AI「Claude」を展開するアンソロピックを相手取り、数万曲規模の歌詞や楽譜が海賊版サイト経由で無断学習に使われたとして訴えを起こしました。

AIと著作権をめぐる紛争の中でも、今回は「どこから、いくらで」作品を使うのかという線引きが正面から問われてきています。


一見すると、AI企業が著作権侵害でまた訴えられただけかというニュースに見えるかもしれませんが、ソニーグループ傘下の音楽出版大手やワーナー・ミュージック・グループ傘下の出版社など35社が、アンソロピックと創業者2人に対して訴えを起こし、1作品あたり最大15万ドルの損害賠償を求めているというのは、なかなか大規模な話ですよね。

生成AIを巡る訴訟については、いまさら珍しくないのですが、今回の争点は「作品をどう学習させたか」という入り口の部分に、はっきり焦点が当たっていて、音楽出版社側が問題視しているのは、単に著作権で保護された歌詞が学習に含まれたという事実だけではないようです。

訴状では、アンソロピックが2021年から22年にかけ「Library Genesis」「Pirate Library Mirror」といった違法なデジタル海賊版アーカイブから、トレントを使って700万冊を超える書籍データを取得したと主張されており、その中には、歌詞集や楽譜集のかたちで原告側が権利を持つ作品が数百曲以上含まれていたようです。

さらに、出版社側は別のサイトに掲載されていた歌詞も無断で収集されたと見ているようで、こうした取得経路が積み重なった結果として、Claudeがユーザーへの回答で、著作権で保護された歌詞と「全く同一、あるいは酷似した複製物」を生成しうる状態になっていると告発しています。

これは、単なる「学習に使ったかどうか」の議論から一歩踏み込み、海賊版サイトを経由した大規模なコピーと、その出力への影響を一体の問題として突いているのが、ことの重要性を指し示しています。

訴えの中で挙げられている曲名はもかなり象徴的で「Eye of the Tiger」「Ain’t No Mountain High Enough」「All I Want for Christmas is You」「Paper Rings」「Livin’ On a Prayer」「September」「Hallelujah」など、いずれも世界的に知られた楽曲で、出版社側は、数千どころか「数万曲」の歌詞が無断で収集されているとし、こうした作品群がClaudeの訓練データとして取り込まれたことで、人間のアーティストが制作した楽曲と市場で競合しうるAI生成歌詞が生み出される状況を危惧しています。

さらに、求められている賠償の水準については、出版社側は、Claudeの学習に無断で使われた各楽曲について、最大15万ドル、約2400万円の法定損害賠償金を求めていて、対象が「数万曲」とされる規模であることを踏まえると、金額は単に過去分の補填を超え、今後AI企業が著作物をどのような条件とコストで扱うかを左右しうる判決となりそうです。

著作権者の側は、テクノロジーの革新そのものではなく、そのために用いられる取得手段と補償のレベルに明確な下限を引こうとしているわけです。

アンソロピックにとっては、著作権をめぐる争いは今回が初めてというわけでもなく、2025年9月、海賊版書籍の利用をめぐる集団訴訟では、著者らに総額15億ドル以上を支払うことで和解しています。

そこでは書籍分野が中心だったのですが、今回の提訴では楽曲と歌詞が正面から争点になり、OpenAIがニューヨーク・タイムズやブリタニカ百科事典から相次いで提訴されていることも踏まえると、生成AI業界全体に対し「必要なデータ量」と「許容される入手方法」の関係を見直す圧力が段階的に強まっていると言えますね。

音楽出版社35社による訴えが示しているのは、AIの学習利用そのものの是非を抽象的に問う段階から「海賊版を含むどのような経路で作品を集めたのか」「無断利用1作品あたりのリスクはいくらなのか」という、より具体的なラインを詰める段階へ移りつつあるということであり、どれほど革新的なAIモデルであっても、著作権で守られた作品を大量に取り込むなら、その入口と代償をどう設計していくのか?

音楽出版社側としては、ここで「これをやると、これくらいの金額リスクになる」という見せしめ基準を作りたいわけで、その意味でも、過去の和解や海賊版ルートが可視化されているAnthropicが、最初のターゲットとして選ばれたのでしょうね。