ChatGPTに広告、検索の主戦場は「決める瞬間」へ

広告枠AI

OpenAIは8月10日に広告ポリシーを更新し、13日には新たな最高売上責任者の就任を発表、表面的には無料サービスへの広告導入となるのですが、会話AIでは利用者が予算や条件を伝えた「決める直前」に広告を出せる点で、従来の検索広告とは競争軸が異なってきそう。

ChatGPT広告と新CRO就任が同時に動いた理由

OpenAIによれば、ChatGPTはすでに週10億人超、200万社超が利用しているのだそうで、この規模の利用基盤に対し、8月に入り広告ポリシーの更新と売上責任者の新設がほぼ同時に発表されたことは、広告事業を one of many機能ではなく、収益の柱として本格的に位置づけ始めたことようですね。

すでに、アメリカのFree・Go利用者を対象にChatGPT広告をテストしているようで、広告は回答とは分離し「Sponsored」と表示する方針となっているようです。

広告主には会話内容やチャット履歴、メモリ、個人情報を渡さず、表示回数やクリックなど集計データのみが提供されるようで、無料サービスを広告で支えるという、動画やSNSでもおなじみの仕組みと同じような体制に。

検索広告の起点が「キーワード」から「意思決定直前」へ

構造的に異なるのは、ChatGPTでは利用者が「東京で3泊、子連れ、予算15万円」「MacBookとWindows PCで迷っている」といった具体的な条件を会話の中で伝えることで、それによりOpenAIは、利用者が選択肢を調べ、比較し、決定する場面を広告価値の中心に据えているのだとか。

従来の検索広告は「ノートPC おすすめ」のような短いキーワードで検索されており、表示されたものに対して利用者自身が複数サイトを回って比較検討する必要がありました。

しかし、会話AIでは、比較そのものをAI側に任せられることから、広告が接触するタイミングは、検索の入口から意思決定の直前へと移り始めています。

この流れはOpenAIだけのものではなく、GoogleはAI Modeが月間10億人超に達したとし、会話型検索の中で商品やサービスを提示する新しい広告形式を開発しているようですよ。

なぜ今なのか、計算資源9.5倍という背景

この動きの背景には、AIサービスを支える運営コストの急拡大がああるようで、OpenAIによれば、同社が利用できる計算資源は2023年の0.2GWから2025年には約1.9GWへ、9.5倍に増えていて同期間に年間経常収益も、20億ドルから200億ドル超へ拡大しているとはいえ、より多くの計算資源を確保するため、OpenAIでは、サブスクリプション、API、コマース、広告を組み合わせる方針を示しています

広告導入は単なる収益源の追加ではなく、無料利用者を維持しながら巨大な計算コストを賄うための事業構造の一部と見る方が実態に近いようですね。

広告主・メディア・利用者に生まれる利害のねじれ

この変化は関係者に異なる影響を及ぼし、広告主やEC事業者にとっては、検索キーワードでは捉えにくかった具体的な購買意図に接触できる機会が広がる一方、AIが比較を代行すればするほど、利用者がブランド公式サイトに訪れる前に候補から外されてしまう可能性もあり、素直に喜べない部分もあるようです。

さらに最も立場が厳しくなり得るのは、比較サイトやレビューメディアであり「おすすめ10選」といった記事が担ってきた役割をAI自身が果たすようになれば、比較系コンテンツへの検索流入は減っていくでしょうし、皮肉なのは、こうしたメディアの情報がAIの回答を支える材料として使われながら、自サイトへの訪問者は失われるという構図が生じかねないこと。

一般利用者にとっては、比較の手間が減るという利便性があるとはいえ、AIの回答と広告表示の境界を意識することが必要になってきます。

たとえば「3万円以内で仕事用イヤホンを選んで」と聞き、AIが提示した候補の直後にスポンサー商品が表示された場合、どこまでがAIの評価でどこからが広告なのかを利用者自身が見極める場面が増えていくことになるでしょう。

この変化は定着するのか、判断材料は何か

会話型広告が社会に定着する要因としては、AIが検索・比較・商品選択に使われる割合が増えるほど、意思決定直前の利用者に接触できる広告枠に経済的価値が生まれることが挙げられます。

OpenAIだけでなくGoogleも同じ市場を作り始めていることを考えると、この動きが一過性の実験だけではなく、今後の新たな広告枠としてのニーズが高まっていくことは間違いないでしょう。

一方で、広告表示によって回答への信頼が低下し、利用者が有料プランや別サービスへと移動するようになると、広告主にとっての魅力は薄れてしまいますし、健康や金融などの利用者の警戒感が強い領域ではその反発が大きくなり得ることから、OpenAIは、現在もこうした分野への広告表示を強く制限しているようです。

今後を見極めるうえで有効な指標としては、広告対象国や対象プランの拡大が挙げられ、アメリカ以外の国へ急速に広がるようになれば、事業化が進んでいることにもなるでしょうし、限定テストが長期化するようであれば慎重姿勢が続いていると考えていいでしょう。

また、この流れで登場してきそうなのは、広告主自身が出稿できるセルフサービス化やCPC入札、コンバージョン計測の拡大であり、OpenAIはすでにAds Managerの整備を進めているようで、この機能がどこまで拡張されるかは、広告市場としての成熟度を測る手がかりになりそう。

さらに、AI内で決済や予約まで完結する機能が広がるかどうかも、今後の広告のあり方の流れを左右してきそう。

「答える場所」から「決める場所」への移行をどう見るか?

今回の広告導入は、単なる無料サービスの収益化策ではなく、検索・比較・購入という別々に行われてきた行動が一つのAI画面に統合されていく過程の一部と捉えられます。

高額な買い物では、AIが示す候補だけで判断せず、メーカー公式情報や第三者のレビューを別途確認することが引き続き有効ではありますし、ブログやECを運営する側にとっては、検索順位だけを重視する発想から、AIが理解し比較しやすい形で一次情報を公開する発想への転換が、今後の課題として浮かび上がってきます。